鉄鋼業界の理屈だけじゃあダメなのよねぇ・・・
 USスチールって言やぁ、映画『ゴッドファーザーⅡ』でユダヤの大ボスたるハイマン・ロスがキューバからの輸入を一手に掌握できたならばUSスチールを凌ぐ企業を所有することになると、マフィアのボスたるマイケル・コルレオーネに協力をせがむシーンから、往年のアメリカの富を象徴する企業でしたわなっ。
 しかしながら、米メディアが公表した最近の世界における鉄鋼メーカー時価総額では、USスチールは凡そ6,500億円ほどの規模で、同じ米鉄鋼メーカーたるクリーブランド・クリフスは1兆円を越える規模であり、そも世界では韓国のポスコ、日本製鉄、中国の宝山鋼鉄が3兆円に迫る規模であることを思うならば、日本製鉄の側も、またUSスチールの側も、世界における鉄鋼業界の勢力図から両者の合併協議が果たされた筈で、それを米大統領が阻止するのは米外国投資委員会で合併に反対の声を大きくする米通商代表部や米鉄鋼労組の要求を汲んでのことでしょうなぁ。
 もっとも、日本製鉄の経営陣も、そうした政治リスクを勘案して合併を画したものか、米大統領による合併阻止は抬頭するインドの鉄鋼メーカーなどの存在を考えると、愈々将来の途を狭めたものと予想され、江戸時代末期の開国以来、民族の悲願であった銑鉄の自力生産を遂げた官業の衣鉢を継いで、往年産業の米と謳われた鉄鋼の生産を務めて日本の高度経済成長に寄与した日の丸企業が世界の業界で衰勢を辿ることはわが国の国勢の向く方向を暗示するようでなりませんわぁ。