ノーラン・チャート 第二期トランプ政権の始動に伴う関税方針の朝令暮改に米国内は固より日本の株式相場は敏感に反応して激しくスウィングしているが、世界で最も関税障壁を低くし、為に繁栄を果たしたアメリカが「アメリカ・ザ・ファースト」を標榜する大統領によって変身し、恰も自身の首を絞めるような体たらくに嘆息している人は世界に多く在るだろう。
 政治スペクトルを截然と示すノーラン・チャートに拠るならば、個人的自由と経済的自由のベクトル空間において両要素間のトレード・オフ関係が現実的なものと考えると、現代の議会制民主主義制度における投票市場において不動産王が民主党の大統領候補に打ち克つ為にはプア・ホワイトらの票を堅く掌握せねばならず、為にアメリカ第一主義を連呼しなければならなかった。
 従って、NATO加盟諸国に対して国防費を対GDP比の一定比率まで引き上げなければアメリカは加盟諸国に対する支援を止めるとし、ロシア軍の侵攻で人命が奪われている最中のウクライナ大統領に対して、「選挙によって選ばれた大統領じゃない」「任期を過ぎても大統領職に居座ってる」と突き放すのも、アメリカと軍事力やテクノロジーで比肩し得るロシア・中国との衝突を只管回避し、アメリカ第一主義の果実を米選挙民らに確かにする為で、米歴史上に悖る関税方針の逆進、世界に展開する米ビジネスを保護すべく世界警察の任を負う軍事力を余所に、民族諸国の経済的自由と個人的自由を慮外とした第二期トランプ政権は自ずとロシア・中国の策略に蝕まれていくだろうと予想される。
 アメリカの有権者らは自分らにとって実に不幸な大統領を選んだものだ。